羊の頭

SFと日記と。できるだけ無意味に書きます。

2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『星ぼしの荒野から』(ハヤカワ文庫)/『老いたる霊長類の星への賛歌』(サンリオSF文庫)

ティプトリーが去勢を好んだ理由を、私は知らない。しかし、その作品群に度々現れる、屹立するシンボルとそれにあてがわれる剃刀の隠喩は男性/女性を様々な意味合いにおいて惹きつけ続けていると思う。 モチーフとしては、「ヒューストン、ヒューストン、聞…

カート・ヴォネガット『デッドアイ・ディック』(ハヤカワ文庫)

吉野朔実の『恋愛的瞬間』を読んでいたら、全裸で家事をする主婦の話が出てきて思いついたのだが、全裸で生活すると言うのは案外悪くないものなのかもしれない。これからの季節には丁度良さそうだし、緊張感がありそうだ。日々の生活に緊張感を持たせる方法…

イタロ・カルヴィーノ『柔らかい月』(河出文庫)

夜中の百発の春雷とともに桜の季節は終わったが、桜の花を眺めている間、事物の本質が表在化するのか、表面の特質によって本質が決定されるのかぼんやりと考え続けていた。 桜の季節が始まった頃、こんな一節を見た。『まず最初に言えるのは、表面に緑色の静…

シオドア・スタージョン『海を失った男』(河出文庫)

2015/03/25 日々の中にも、タナトスの囁きに満ちた一瞬がある。 流しでグラスを洗っている。洗剤のぬめりを感じながら、グラスを落としてしまうことを考える。たとえステンレスの流しであっても、この高さなら割れるかどうかは五分五分だろう。では、もっと…

山尾悠子『増補 夢の遠近法 初期作品選』(ちくま文庫)

2015/03/18 実家に帰ってきた。しかし、自分の様な人間がこれから社会人になっていく友人たちには会わせる顔がないような、そんな気がして、昼から家でビール片手に本を読み、気づいたら夜中である。そんな日がもう三日も続いている。 山尾悠子の作品はこわ…

シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』(河出文庫)

2015/03/13 スタージョンという作家の特徴をよく反映した作品が二作収められている。 ひとつは「雷と薔薇」。スタージョンの、引き算の幻想作家としての特徴が生きている作品。幻想作家でも、マコーマックや京極夏彦のように絢爛で強固な幻想を打ち立てる(ど…

アンナ・カヴァン 『氷』(バジリコ)

2015/03/01 何ら持病を持たない私たちが痙攣を得るためには、そこに装置が無くてはならない。 痙攣的なギターソロを吐き出し続けたゆらゆら帝国時代の坂本慎太郎にとって、それはおそらくファズであり、全編に渡って痙攣的な想像力が支配するカヴァンの『氷…